楽しい科学の実験室「備長炭で電池を作ってみよう」

おもちゃ、リモコン、時計など、電気を使ういろいろなものには電池が使われています。電池の中ではどのようにして電気ができているのでしょうか?

バーベキューなどで使う備長炭、台所にあるアルミニウムはく食塩などの身のまわりのものを使って、実際に電池を作ってみよう!電池のしくみを学んでみよう!

ヤマラボでは、夏休みの期間中、小中学生たちに科学の楽しさ・面白さ・不思議を紹介する公開講座を開催しています。「夏の自由研究、何をしようかな?」と考えている皆さんの手助けになればと願い、この講座の様子をご紹介してみます。

目次

電池とは?

電池とは、化学反応のエネルギーを電気に変える装置です。

解液とよばれる水溶液に2種類の金属の板をひたして、それぞれの金属の板を導線でつなぐと、電子がながれます。この電子のながれをエネルギーとして取り出すことで、電球を光らせたり、モーターを回したりすることができます。

電池につかう金属の板のことを電極と呼びます。電極には2種類があり、酸化という化学反応によって電子が生まれる方の電極を負極とよび、還元という化学反応によって電子を受け取る方の電極を正極とよびます。このようにして電子の流れができるので、電流が流れることになります。

Image from Gyazo

備長炭電池を作ろう

ホームセンターなどで売られている備長炭という木炭を使って電池をつくることができます。備長炭は、バーベキューのときにつかったり、また、水道水にいれてカルキ臭さを取るためなどにつかったりしますね。

使用する備長炭は、バーベキュー用のものよりも、浄水用のものの方が、あらかじめ洗浄されていたり、形と大きさがそろっているので、使いやすいと思います。

Image from Gyazo

材料は、備長炭の他に、台所にあるものでオーケー。アルミニウム箔、キッチンペーパー、食塩、水などをつかいます。

Image from Gyazo

備長炭の長さに合わせてキッチンペーパーを長方形に切ります。備長炭にキッチンペーパーを巻いて、輪ゴムなどで止めておきます。

Image from Gyazo

コップに水 100 グラム と食塩 36 グラム をいれて、食塩が水に溶けるまでよく混ぜます。できた食塩水を備長炭に巻いたキッチンペーパーに染み込ませます。

Image from Gyazo

キッチンペーパーよりも幅が少し短くなるように、アルミニウム箔を長方形に切ります。食塩水をしみこませたキッチンペーパーの上から、写真のように、アルミニウム箔を巻きつけます。このとき、アルミニウム箔が備長炭に直接触れないように、キッチンペーパーが 1 cm 〜 2 cm くらい見えるように巻きつけてください。

Image from Gyazo

備長炭が見えている部分とアルミホイルが見えている部分に輪ゴムを巻き、備長炭の部分とアルミニウム箔の部分に鉄製のペーパークリップを取り付けると、備長炭電池の完成です。

Image from Gyazo

できあがった備長炭電池にモーターをつないでみると、モーターが回転して、電流が流れていることが分かります。

制作した備長炭電池の性能を電流計ではかってみると、電圧は 0.8 V 程度、電流は 80 mA 程度でした。

Image from Gyazo

ふつうの豆電球を光らせたりするには、電圧は 1.5 V 程度、電流も 150 mA 程度必要になるので、ちょっとパワーが足りません。豆電球を光らせたいときには、備長炭電池をいくつか作って直列でつないでみるなど、色々と工夫してみてください。

動画では、一般的なモーターよりも始動電力の小さなモーターを使っています。今回は、タミヤ製ソーラーモーター 02(Mabuchi RF-500TB)を使いました。ネットなどで太陽電池用のモーターとして販売されていて、1個1000円程度で購入できると思います。

備長炭電池のしくみ

備長炭電池のしくみを簡単に説明すると、まず、アルミニウム箔の部分では、アルミニウムが電子を放出して、アルミニウムイオンとなって食塩水のなかに溶け出します。放出された電子が導線を通って備長炭電池にたどり着きます。

ここで、備長炭そのものが化学反応するのではなくて、備長炭に吸着した酸素が電子を受け取って還元という化学反応がおこり、水酸化物イオンというものができます。このようにして電子の流れができるので、電流が流れることになります。

Image from Gyazo

長時間発電させたあとの備長炭電池を見てみると、キッチンペーパーは乾き、アルミニウム箔はボロボロになっていました。食塩水は蒸発してしまいますし、アルミニウムは先ほど説明したようにイオンとなって溶け出してしまうためです。

Image from Gyazo

今回の実験は、ウバメガシとよばれる木からできた木炭である備長炭を使いました。木炭には、他にも、竹からできる竹炭などがあります。備長炭を使うと電池ができるのですが、他の木炭を使うとなかなか電池ができません。なぜでしょう?

なぜ備長炭を使うのかというと、2つの理由があります。

ひとつは、備長炭の内部には細かい孔が無数にあって、たくさんの酸素を吸着できるからです。もうひとつは、備長炭は炭素の含有率が高く、均一に炭化しているので、電気が流れやすいからです。

Image from Gyazo

自由研究のヒント

実際に実験をやってみると、電流があまり大きくならないことがあります。なぜだろう?とその原因を考えてみながら、電池としてのパワー(豆電球の光のつよさなど)、電池として働く時間など、備長炭電池の性能をアップさせるための方法について、研究してみてはいかがでしょうか?

電池のパワーを向上させるポイントは2つあります。まずは、装置内を電気が通りやすくなるように工夫する必要があります。また、電気を取り出す化学反応が効率的に起こるように工夫する必要があります。

備長炭については、たとえば、長さ・太さを変えてみる、産地を変えてみる、表面を工夫してみる、形を変えてみると、どうなるのでしょうか?

アルミニウム箔については、たとえば、巻き付ける回数や面積を変えてみると、どうなるのでしょうか?

食塩水については、たとえば、濃度を変えてみる、染み込ませる量を変えてみる、また、他の水溶液に変えてみると、どうなるのでしょうか?

Image from Gyazo

さいごに

備長炭電池は、自然災害時などで電源が確保できない場合にも、台所にあるもの集めて作り、非常用として使うことができるかも知れません。

この夏、備長炭でも電池ができるんだ!というオドロキをとおして、科学の楽しさ・面白さ・不思議を体験してみてください。

実験の手引き

科学教室で配布している「実験の手引き」もダウンロードしていただけます。この実験の手引きでは、今回ご紹介した備長炭電池の他に、レモンジュースを使った電池の作り方も紹介しています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

千葉工業大学 応用化学科 教授。専門はコンピュータ化学、コンピュータを使って分子を解析しています。化学の学びを身近にすることにも興味を持っています。

目次