研究室の活動では、研究内容についての発表をおこない、それに基づいてお互いに議論することがあります。発表し、教員や他の学生から質問・意見をもらうことで、自分の研究のどこが評価されているのかを理解し、どこに解決すべき課題があるのかを気づき、研究をさらに進めるための手がかりを見つけることができます。
このような場では、その発表による気づきや理解を深めようとするときに、話し手が上手に発表しようと心がけるだけではなく、聞き手がしっかりと「聴く」・より良く「訊く」ことを心がけることも大切だと思っています。
より良く「訊く」とは、より良い質問ができるということ。より良い質問とは、発表者に気づきを与えるような質問、聴衆の理解が深まるような質問なのかなと思っています。そして、良い訊き手は、発表者を責めてしまうことがないように、困らせてしまうことがないように、自分の意見を相手に押し付けてしまうことがないように、敬意のある訊き方ができるひとであると思っています。
とは言え、学生にとって、研究発表の場に参加した経験が少ないうちには、話し手などから「何か質問はありますか?」と尋ねられても、何を質問したらいいのか、なかなか思いつかなくて困ってしまうことがあるかも知れません。そこで、こんな質問はどうかな? という具体例をいくつか示してみることにします。
こんな質問はどうかな?
背景
- この研究に取り組むことが必要になった背景について、もう少し詳しく説明していただけますか?
- この研究に関連する先行研究では、どのような学術的・社会的課題が解決されていなかったのでしょうか?
目的
- この研究で解決すべき課題・達成したい事項について、もう少し詳しく説明していただけますか?
方法
- 〇〇の定義について、もう少し詳しく教えていただけますか?
- この研究で〇〇という方法を用いた理由について、もう少し詳しく教えていただけますか?
- この研究で用いた〇〇という方法は、△△という方法と比較して、どのような違いがあるのでしょうか?
結果
- 〇〇という結果については、どのようなことが原因だと考えらるのでしょうか?
- 〇〇という結果に影響を与える要因について、推測されること・考えていることは何かありますか?
- 〇〇という結果は、どのようなことを意味しているのでしょうか?
考察
- 〇〇について、△△という説明でしたが、その他に考えられる解釈はありますか?
- 〇〇について、△△という説明でしたが、そのように主張できる根拠を教えていただけますか?
結論
- この研究で最終的に明らかになったことについて、もう少し詳しく説明していただけますか?
- この研究で解決には至らずに、残されている課題・今後取り組むべき課題はありますか?
発表者の真剣な取り組みに対して敬意を持ってフィードバックすることで、発表者から「励みになった」「助けになった」「役に立った」という言葉がもらえたならば、訊き手も、大切な気付き・大きな学びが得られるのではと思っています。
より良い訊き手になることを目指してみませんか?
この記事は、 近田 政博(編集)「シリーズ 大学の教授法 5 研究指導」 (p. 140)の「誠実な「きき手」を育てる」というアイデアを参考にしました。