量子化学2

このページでは、千葉工大・応用化学科の学生が3年生前期に受講する科目「量子化学2」の資料を公開しています。

受講者以外の方で、ここで共有している資料について、説明が間違っていたり、内容が不足していることにお気づきになり、それを山本に伝えたいと思われた方は、ここからお知らせください。

目次

ガイダンス

第1回

余談

今回のスライドにあるイラストは、下記の本から引用して使わせていただきました。かわいいイラストに導かれながら、量子化学の基本を楽しく学べる本ですよ。「この講義で単位が取れるかどうか」は、ガイダンスで説明した評価の方針を確認してくださいね。

講談社
¥2,640 (2024/04/21 18:50時点 | Amazon調べ)

量子化学を学ぶと何が嬉しいの?何が楽しいの?を知りたいなという人にオススメなのが次の本です。上で紹介した本と同じように、楽しくて分かりやすいイラストがたくさんあって、ひとつひとつの説明が丁寧で柔らかいので、分子のなかの電子の振る舞いを上手にイメージできるようになるのではと思います。

ベレ出版
¥1,870 (2024/04/22 08:28時点 | Amazon調べ)
参考:過去の講義動画

コロナ禍で慌てて作った動画ということもあり、説明が間違っていたり、不足していることがあります。ご注意を。あくまでも「授業の補助」としてお使いください。

第2回

余談

この講義のなかで紹介するヒュッケル法ですが、その面白さが「いまいち分からん😕」と思うかも。そんなひとには、藤永茂「分子軌道法」(絶版)という本に書かれた次の言葉をシェアしてみたいと思います。私の講義でも、「その思い切った簡単かにもかかわらず、物の本質がしっかりととらえられている」というヒュッケル法の素敵な魅力について、少しでも伝わったら嬉しいなと思っています。

参考:過去の講義動画

コロナ禍で慌てて作った動画ということもあり、説明が間違っていたり、不足していることがあります。ご注意を。あくまでも「授業の補助」としてお使いください。

第3回

補足

今回の授業で使うヒュッケル法のアプリ(HuLiS)は、下記リンク先からアクセスできます。少し大きなサイズの共役系分子でも、このアプリを利用することで、簡単に・お手軽に分子軌道を解析できますね。

参考:過去の講義動画

コロナ禍で慌てて作った動画ということもあり、説明が間違っていたり、不足していることがあります。ご注意を。あくまでも「授業の補助」としてお使いください。

第4回

エネルギー(eV)を波長(nm)に変換するには?

少し説明が長くなったので、回答を「こちら」にまとめました

参考:過去の講義動画

コロナ禍で慌てて作った動画ということもあり、説明が間違っていたり、不足していることがあります。ご注意を。あくまでも「授業の補助」としてお使いください。

第5回

参考:過去の講義動画

コロナ禍で慌てて作った動画ということもあり、説明が間違っていたり、不足していることがあります。ご注意を。あくまでも「授業の補助」としてお使いください。

第6回

参考:過去の講義動画

コロナ禍で慌てて作った動画ということもあり、説明が間違っていたり、不足していることがあります。ご注意を。あくまでも「授業の補助」としてお使いください。

演習プリント

用語集

  • 永年方程式:量子化学において、試行波動関数を原子軌道の線形結合で表した場合に得られる同次連立一次方程式。この方程式を解くことで、分子軌道のエネルギー準位と波動関数の係数が得られる。
  • 永年行列式:永年方程式の自明でない解を持つための条件を行列式として表現したもの。この行列式の値をゼロと置くことで、分子軌道のエネルギー(固有値)を求めることができる。
  • 変分原理:量子力学の原理の一つで、任意の規格化された試行波動関数から計算されるエネルギー(変分エネルギー)は、系の真の基底状態エネルギーよりも大きいか等しいというもの。真の波動関数を見つけるための重要な指針となる。
  • シュレーディンガー方程式:量子力学における基本的な方程式で、系の波動関数が時間や空間とともにどのように変化するかを記述する。時間依存シュレーディンガー方程式と時間非依存シュレーディンガー方程式が存在する。これを解くことで、系のエネルギーや波動関数が得られる。
  • 波動関数:量子力学において、粒子(電子など)の状態を記述する数学的な関数。その絶対値の二乗は、特定の場所で粒子を見つける確率密度を表す。
  • ハミルトニアン:量子力学における演算子で、系の全エネルギー(運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの和)に対応する。シュレーディンガー方程式に含まれる重要な要素。
  • 原子軌道:原子核の周りの特定の領域における電子の存在確率を記述する波動関数。通常、原子の中心にある核に対する電子の波動関数を指す。分子軌道の構築の基礎となる。
  • 分子軌道:分子全体に広がった電子の波動関数。原子軌道の線形結合(LCAO: Linear Combination of Atomic Orbitals)によって表現されることが多い。
  • 線形結合:複数の関数を定数倍して足し合わせたもの。原子軌道を線形結合することで分子軌道が構築される。
  • 展開係数:分子軌道を原子軌道の線形結合で表す際に、それぞれの原子軌道にかかる定数。これらの係数は永年方程式を解くことで決定される。分子軌道の原子軌道成分の大きさを表す。
  • 極小値:関数の値が局所的に最も小さくなる点。変分原理において、エネルギーの極小値を求めることは、真の波動関数により近づくことを意味する。
  • 共役分子系:複数の二重結合や三重結合が単結合を挟んで連続している分子構造。π電子が非局在化しており、特異な電子状態や反応性を示す。単結合と多重結合が交互に並んでいることが特徴。
  • π電子:π結合に関与する電子。共役分子系では、これらの電子が非局在化し、その性質が系の化学的性質に大きく影響する。原子のp軌道などが横方向に重なり合って形成されるπ軌道に存在する。
  • ヒュッケル法:共役π電子系を扱うための簡略化された分子軌道法。いくつかの近似(σ電子とπ電子の分離、隣接原子間の共鳴積分βのみ考慮、重ね合わせ積分S=0など)を導入することで、比較的容易にπ電子のエネルギー準位や波動関数を計算できる。
  • 1電子積分:量子化学計算において現れる積分の一つで、電子1個が原子核やその他のポテンシャルの影響下で持つエネルギーに関連する項。ヒュッケル法ではアルファ(α)やベータ(β)で近似される。具体的には、クーロン積分や共鳴積分などが含まれる。
  • 重なり積分:異なる原子軌道が空間的に重なり合う程度を表す積分。ヒュッケル法では、通常、異なる原子上の軌道間の重なり積分(Sij)をゼロと近似し(特にiとjが直接結合していない場合)、同じ軌道間の重ね合わせ積分(i=j)を1とする。
  • アルファ (α):ヒュッケル法における対角要素の近似値。特定の原子軌道における電子のクーロンエネルギーに対応すると考えられる。一般的に負の値を持つ。
  • ベータ (β):ヒュッケル法における非対角要素の近似値。結合している原子軌道間の相互作用エネルギーに対応すると考えられる。常に負の値をとる。共鳴積分とも呼ばれる。
  • 規格化条件:波動関数の絶対値の二乗を全空間で積分すると1になるという条件。これは、粒子が全空間のどこかに存在する確率が1であることを意味する。
  • 基底状態:系の最もエネルギーの低い状態。通常、電子がエネルギーの低い軌道から順に占有している状態。
  • 励起状態:系の基底状態よりもエネルギーの高い状態。電子がエネルギーを吸収することで励起状態に遷移することがある。
  • HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital): 基底状態において電子が占めている最もエネルギーの高い分子軌道。求核反応や電子供与に関与しやすい。
  • LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital): 基底状態において電子が占有していない分子軌道の中で最もエネルギーの低い軌道。求電子反応や電子受容に関与しやすい。
  • HOMO-LUMO ギャップ:HOMOのエネルギーとLUMOのエネルギーの差。このエネルギー差は、分子の反応性や電子遷移エネルギー、光吸収特性と関連が深い。
  • π-π*遷移:π軌道(結合性π軌道)にいた電子が、光を吸収してπ*軌道(反結合性π軌道)に遷移すること。共役分子系の光吸収に関わる重要な電子遷移。
  • 電子密度:特定の場所における電子の存在確率の密度。分子軌道とその占有数から計算される。
  • 結合次数:隣接する原子間の結合の強さを表す指標。分子軌道とその占有数から計算され、値が大きいほど結合が強いとされる。
  • フロンティア軌道理論:分子の化学反応性をHOMOとLUMOといった最前線の軌道(フロンティア軌道)の性質に基づいて予測する理論。福井謙一博士によって提唱された。
  • ディールス・アルダー反応:共役ジエンとアルケン(求ジエン体)が反応して、六員環構造を生成する協奏的環化付加反応の一種。フロンティア軌道理論でよく説明される反応例である。通常、ジエンのHOMOと求ジエン体のLUMO、あるいはその逆の相互作用が支配的となる。
  • シス配座:共役ジエンにおいて、単結合を挟んで二つの二重結合が同じ側を向いている配座異性体。ディールス・アルダー反応が進行するためには、ジエンがこのシス配座をとる必要がある。
  • トランス配座:共役ジエンにおいて、単結合を挟んで二つの二重結合が逆側を向いている配座異性体。この配座ではディールス・アルダー反応は進行しにくく、シス配座に比べて反応性が低いことが多い。

次のステップ

この講義で学ぶ「量子化学」は、コンピュータを用いて分子を解析する「量子化学計算」の基礎となります。応用化学実験3「量子化学実験」では、代表的な量子化学計算アプリである Gaussian を用いて、ディールス・アルダー反応の理論的な解析に取り組みます。

もう少し実践的な量子化学計算の基礎について、無償で利用できるアプリ GAMESS を用いた手引きも公開しています。ので、もし興味があれば読んでみてください。

山本研究室(ヤマラボ)では、量子化学計算を用いた様々な研究に取り組んでいます。もし興味を持っていただけたら、ヤマラボを見学してみてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

千葉工業大学 応用化学科 教授。専門はコンピュータ化学、コンピュータを使って分子を解析しています。化学の学びを身近にすることにも興味を持っています。

目次