千葉工業大学 / 応用化学科 / 山本研究室
計算化学で生命・物質・環境・教育の問題解決
投稿:21-08-21

本田 恒太, AIChE J. (2021)

題名

The formation and growth model of a CO2 hydrate layer based on molecular dynamics

雑誌

AIChE J., Vol. 68, e17406 (2021)

著者

本田 恒太(1) / 藤川 凛太郎(1) / 馬 驍(1) / 山本 典史 / 藤原 広太(1) / 金子 暁子(1) / 阿部 豊(1)

  1. 筑波大学 システム情報工学研究科

概要

This study develops a model to predict the CO2 hydrate layer thickness. As to achieve this, we need the mass transfer coefficients at the interface between water phase and CO2 hydrate layer and the diffusion coefficients in CO2 hydrate. Firstly, we conducted the visualization experiment of CO2 hydrate layer dissolution behavior. From the experiment, we obtain the mass transfer coefficient on the CO2 hydrate layer. The experimental results show good agreement with the existing empirical equation. Secondly, we conducted the molecular dynamics simulation of CO2 hydrate to obtain the self-diffusion coefficients of CO2 and H2O molecules. As to calculate the self-diffusion coefficients, we identified inter-cage hopping and intra-cage movement of molecules based on each molecule travel distance. Finally, the results indicate that the kinetic model we proposed reproduce the layer thickness on the order.

解説

この研究は、筑波大学・システム情報系 の 阿部 豊 先生、金子 暁子 先生、そして、お二人が指導された大学院生たち(本田さん、藤川さん、馬さん)と一緒に取り組みました。

火力発電所などから排出される二酸化炭素(CO2)は、地球温暖化や海洋酸性化の原因となることが知られています。2015年の国連サミットで提案された持続可能な開発目標(SDGs)のなかでも、「気候変動に具体的な対策を」という目標が掲げられており、気候変動の原因となるCO2を削減することが世界的にも重要な課題となっています。

そこで、排出されるCO2を他の気体から分離・回収し、大気の影響のない場所に貯留するするという取り組みが注目を集めています。このような取り組みは「二酸化炭素回収・貯留」(Carbon dioxide Capture and Storage; CCS)と呼ばれています。

CCSでは、地中や海洋に隔離するための様々な方法が検討されています。このひとつに、大規模排出源で回収されたCO2をタンカーなどで海洋に輸送して、深海底に液体として注入し貯留する「海底貯留法」があります。ここで、化学の授業で学んだ「CO2が水に溶けると弱酸性を示す」ということを思い出してみると、この方法では海洋が酸性化してしまい、海の生物たちに悪影響を及ぼしてしまうのでは?と心配になるかも知れません。

でも実は、深海底にCO2を液体として注入すると、CO2層と海水層の間に「ハイドレート」と呼ばれる氷状の固体物質で出来た膜を作ることが知られています。このハイドレート層が「ふた」となることで、CO2を海底に閉じ込めることができるようになります。このハイドレート層は、時間が経つにつれて段々と成長して厚くなっていき、CO2をより効率的に貯留することができると考えられています。しかし、ハイドレート層がどのように成長するのかについて、理論的に予測する方法がありませんでした。

この研究では、実験と分子シミュレーションを組み合わせて、CO2ハイドレート層が成長して厚さが変化するプロセスを予測する理論モデルを新しく開発しました。

Image from Gyazo

ガスハイドレート層の成長モデルを構築するためには、水層とガス層の界面における物質移動係数、よび、ハイドレートにおけるガス分子の拡散係数が必要となります。そこで本研究では、はじめに、CO2ハイドレート層の溶解挙動を可視化する実験に取り組みました。この実験に基づいて、CO2ハイドレート層の物質移動係数を決定しました。次に、CO2ハイドレートの分子動力学シミュレーションをおこない、CO2分子と水分子の自己拡散係数を算出しました。

このように、実験と分子シミュレーションを組み合わせることで決めた物質移動係数と拡散係数に基づいて、ハイドレート層の成長プロセスを予測する理論モデルを新たに提案しました。提案したモデルに基づいてハイドレート層の膜厚変化を予測したところ、実験で観測された結果とよく一致することが明らかになりました。

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