千葉工業大学 / 応用化学科 / 山本研究室
計算化学で生命・物質・環境・教育の問題解決
投稿:21-05-11

Mohini Yadav, PeerJ (2021)

題名

Dynamic residue interaction network analysis of the oseltamivir binding site of N1 neuraminidase and its H274Y mutation site conferring drug resistance in influenza A virus

雑誌

PeerJ, Vol. 9, p. e11552 (2021)

著者

Mohini Yadav / 五十嵐 学(1) / 山本 典史

  1. 北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター

概要

Oseltamivir (OTV)-resistant influenza virus exhibits His-to-Tyr mutation at residue 274 (H274Y) in N1 neuraminidase (NA). However, the molecular mechanisms by which the H274Y mutation in NA reduces its binding affinity to OTV have not been fully elucidated. In this study, we used dynamic residue interaction network (dRIN) analysis based on molecular dynamics simulation to investigate the correlation between the OTV binding site of NA and its H274Y mutation site. dRIN analysis revealed that the OTV binding site and H274Y mutation site of NA interact via the three interface residues connecting them. H274Y mutation significantly enhanced the interaction between residue 274 and the three interface residues in NA, thereby significantly decreasing the interaction between OTV and its surrounding loop 150 residues. Thus, we concluded that such changes in residue interactions could reduce the binding affinity of OTV to NA, resulting in drug resistant influenza viruses. Using dRIN analysis, we succeeded in understanding the characteristic changes in residue interactions due to H274Y mutation, which can elucidate the molecular mechanism of reduction in OTV binding affinity to influenza NA. Finally, the dRIN analysis used in this study can be widely applied to various systems such as individual proteins, protein-ligand complexes, and protein-protein complexes, to characterize the dynamic aspects of the interactions.

どんな研究なの?

インフルエンザの治療では、病気の原因となるウイルスの増殖を抑えるためのさまざまな薬が使われています。たとえば、インフルエンザに罹ってしまったときに、リレンザ(ザナミビル)タミフル(オセルタミビル) という薬のお世話になったことがある人も多いと思います。このような薬のおかげで病気の進行を抑えたり、症状を軽くすることができます。

しかし、ウイルスたちも賢くて、薬のはたらきを弱めることができるように変化したウイルスが登場してしまうことがあります。このような「薬が効きにくくなったウイルス」のことを薬剤耐性ウイルスと呼んでいます。

この研究では、分子のふるまいをコンピュータの中で再現することができる分子シミュレーションという方法を使って、インフルエンザウイルスが薬剤耐性を獲得するメカニズムを調べました。

もう少し詳しくお話すると、この研究では、分子シミュレーションを使ってタンパク質内部の動的な相互作用を詳しく解析するための新しい方法を開発しました。この方法を用いることで、インフルエンザの治療で頻繁に用いられているタミフルに対してウイルスが薬剤耐性をもつようになってしまうメカニズムについて、分子レベルで明らかにすることができました。

もう少し専門的に

インフルエンザの治療では、ウイルス粒子表面に存在するノイラミニダーゼの酵素活性を阻害することでウイルス増殖を抑えるオセルタミビルが広く用いられている。しかし近年、オセルタミビルに対して耐性をもつ変異株が度々出現し、その大規模な流行が懸念される。

鳥インフルエンザウイルスのオセルタミビル耐性株では、ノイラミニダーゼの274番目のアミノ酸がヒスチジンからチロシン(H274Y)に置換していることが高頻度に報告されている。本研究では、インフルエンザウイルスがオセルタミビルに対して薬剤耐性を獲得するメカニズムについて、分子動力学シミュレーションを用いて解析した。

具体的には、タンパク質内部におけるアミノ酸残基間の動的な相互作用ネットワーク(dRIN)を定量的に解析する手法を開発し、天然型と薬剤耐性型ノイラミニダーゼに適用した。その結果、H274Y変異を持つノイラミニダーゼは、薬剤結合部位近傍にdRINの特徴的な変化が起こることが原因で、オセルタミビルに対する感受性(結合親和性)が顕著に低下していることが明らかになった。

本研究で開発したdRIN法は、HIVの薬剤耐性化機構の解明など、他の様々なタンパク複合体の解析にも広く応用できると考えられる。

インフォグラフィック

PeerJでは、専門家による検証(査読)を経て採択された論文について、研究成果を視覚的に表現する「インフォグラフィック」の制作をプロのデザイナーに依頼するオプション(有料)があります。今回、初めてPeerJに投稿・採択された記念に、インフォグラフィックの制作を依頼してみました。

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