2022年度「ひらめき☆ときめきサイエンス」に採択されました
山本が提案したテーマが、今年度も、ひらめきときめきサイエンス1 に採択されました。
- テーマ: かたちで決まるタンパク質のはたらき:タンパク質が活躍するミクロな世界を見てみよう
- 予定日: 2022年7月23日(土)
- 対象者:高校1〜3年生(25〜30名程度)
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この企画について、興味をもっていただいた高校生のみさなん、また、先生方、ぜひ 山本 までご連絡ください。準備が整い次第、申し込み方法などについてお知らせいたします!
前年度の様子は こちら 。
プログラムの内容
背景・目的
高校生が用いる生物の教科書では、タンパク質に関わる発展的な話題として、アルツハイマー病の原因となる「タンパク質の異常なかたち」が紹介されている。しかし、**なぜタンパク質の「かたち」が「病気」と関わるのか?**という「科学的好奇心を刺激する疑問」に対する詳しい説明はない。
本プログラムでは、実施者が学術研究で用いる分子モデリングソフトや分子模型などを活用して、タンパク質の「かたち」を見る・触る・作るという自発的で積極的な活動を促すことで、なぜタンパク質の「かたち」が病気と関わるのか?を探求する学術研究の一端を受講生が自ら体験し考察することを目的とする。さらに、実施者自身のこれまでの歩みを紹介することで、タンパク質のふるまいが体内で巧みに制御される仕組みの面白さ、生命現象をミクロの世界から眺めたときの感動、病気の克服を目指した研究に携わる私たち研究者の想いを伝えることで、受講生の心の豊かさ・知的創造性を育むことに繋げたい。
講義・実習
講義①「かたちで決まるタンパク質のはたらき」(20分):タンパク質のカタチ(立体構造)の成り立ちについて,生物を未履修の受講生にも理解しやすいように工夫しながら説明し,高校生物の教科書で登場する代表的なタンパク質のカタチと機能の密接な関わりを説明する。
講義②「タンパク質のかたちと病気」(40分):3Dプリンターで出力した立体模型などを使いながら,ヘモグロビンの構造異常が原因で発症する鎌状赤血球貧血症,新型コロナウイルスの変異株など,タンパク質の変異や構造異常が原因で引き起こされる様々な病気について説明する
実習①「コンピュータをつかって薬を設計してみよう」(90分):実施者が研究で用いる創薬支援ソフトの無料版(myPresto Portal)を用いてインフルエンザの治療薬を受講生が自ら実際に分子設計する。さらに,自らが設計した分子について,受講生同士でお互いに討論するワークをおこなう。
実習②「分子模型でタンパク質のかたちをつくってみよう」(90分):タンパク質のカタチの成り立ちを直感的に理解することを助けてくれる教材(Tangle Protein Building Kit)を使って,この模型を試行錯誤しながら組み立てるワークをおこなう。さらに,この体験を通して実感した「タンパク質のカタチが成り立つ仕組みの巧妙さ」について,受講生同士でお互いに討論するワークをおこなう。
プログラム当日のスケジュール
- 9:30 - 10:00 受付(千葉工業大学・津田沼キャンパス・コンピュータ演習室)
- 10:00 - 10:20 開講式(オリエンテーション,科研費の説明,実施者の自己紹介,アイスブレーク)
- 10:20 - 10:40 講義①「かたちで決まるタンパク質のはたらき」
- 10:40 - 10:50 休憩
- 10:50 - 11:30 講義②「タンパク質のかたちと病気」
- 11:30 - 12:00 ラボツアー(千葉工業大学・津田沼キャンパス・NMR実験室/学生実験室)
- 12:00 - 13:00 昼食(千葉工業大学・学生食堂)
- 13:00 - 14:30 実習①「コンピュータをつかって薬を設計してみよう」
- 14:30 - 14:40 休憩
- 14:40 - 16:10 実習②「分子模型でタンパク質のかたちをつくってみよう」
- 16:10 - 16:30 クッキータイム(アンケート記入)
- 16:30 - 17:00 修了式(未来博士号授与,集合写真撮影)
- 17:00 終了・解散
実施方法の工夫
受講生に分かりやすく研究成果を伝えるための工夫
- 学習意欲を高めるための方策であるARCS(Attention/Relevance/Confidence/Satisfaction)動機付けモデル(Keller, 2010)に基づいて,本プログラムの研修設計・教材開発をおこなう。
- 注意(Attention) を高める工夫として,タンパク質の立体構造を組み立てることができる分子模型,深刻な社会問題である新型コロナを「見て・触って」みることができる3Dプリンタで制作した模型などを教材に用いることで,受講生の知覚的喚起を促す。
- 関連性(Relevance) を高める工夫として,高校生物で馴染みのあるタンパク質であるヘモグロビンを題材として,そのカタチが異常となることで発症する鎌状赤血球貧血症のメカニズムについて,高校化学で学ぶ親水性・疎水性の概念も使いながら,構造生物学的観点から説明する。
- 自信(Confidence) を高める工夫として,実施者が実際に研究で用いる創薬支援ソフトの無料版を活用し,インフルエンザの治療薬を受講生が自ら実際に分子設計する体験を通して,受講生が最先端の創薬の一端を体験する機会をつくる。
- 満足感(Satisfaction) を高める工夫として,実習で用いる分子模型の一部を持ち帰ることができるようにし,実習で用いるソフトに無料版を用いることで,受講生が本プログラムで学んだことを課題研究などに応用する機会をつくり,その科学的好奇心を刺激し続けるようにする。
受講生が自ら活発に活動し考察するための工夫
- 実習では,創薬支援ソフトや分子模型を用いた活動後,対話型論証モデル(Matsushita, 2021) に基づき,「他者と対話しながら科学的根拠をもって論理的主張を組み立てるワーク」をおこなう。
- 実習①では,インフルエンザについて,製薬企業でも導入の実績がある創薬支援ソフトを用いて,その治療薬をコンピュータ上で設計・薬剤効果を予測する「インシリコ創薬コンテスト」を実施する。その後,**設計した分子がなぜ薬剤効果が高い(低い)と予測されたのか?**について,論証を助けるツール(ワークシート)を使いながら受講生同士で主張・事実・根拠に基づいて対話することで,治療薬の合理的な設計指針を受講生自らが自発的・積極的に考察するワークをおこなう。
- 実習②では,分子模型を用いて,プラモデルをつくる手軽さ・パズルを解く楽しさでタンパク質を組み立てるワークをおこなう。その後,**なぜ多数のアミノ酸が連なったペプチドの鎖が絡まらずに複雑な立体構造を作るのか?**について,受講生同士で主張・事実・根拠に基づいて対話をすることで,タンパク質の構成原理を受講生自らが自発的・積極的に考察するワークをおこなう。
大学や研究機関で「科研費」(KAKENHI)により行われている最先端の研究成果に、小学5・6年生、中学生、高校生の皆さんが、直に見る、聞く、触れることで、科学のおもしろさを感じてもらうプログラムです。 ↩︎