千葉工業大学 / 応用化学科 / 山本研究室
計算化学で生命・物質・環境・教育の問題解決
投稿:21-07-31

2021年度「ひらめき☆ときめきサイエンス」を開催しました

コンピュータ・シミュレーション分子模型を活用することで、タンパク質が活躍するミクロな世界の楽しさ・面白さ・不思議を紹介する高校生向けの講座(ひらめき☆ときめきサイエンス)を2021年7月31日(土)に千葉工業大学で開催しました。

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ひらめき☆ときめきサイエンスとは?

大学や研究機関で「科研費」により行われている最先端の研究成果に、小学5・6年生、中学生、高校生の皆さんが、直に見る、聞く、触れることで、科学のおもしろさを感じてもらう事業です。今回のプログラムは、日本学術振興会に採択され、実施に必要な経費を支援していただきました。

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開講式

講義・実習は、ICT環境が整備された千葉工業大学・津田沼キャンパス内にあるコンピュータ演習室で実施。受講生には、さまざまな分子模型を配布しました。

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そのほかに、今回の講義の内容とはあんまり関係はないけれど、カーボンナノチューブやフラーレンなど、研究室に置いてあった様々な分子模型も展示。

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開講式では、はじめに、実施者である山本が研究者になるまでの体験談などをお話しながら、簡単に自己紹介。そして、私たち研究者をサポートしていただいている科学研究費助成事業(科研費)についても説明しました。

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開講式の最後に、受講生の緊張をほぐして楽しく講義・実習に参加していただけるようにアイスブレイクフリップを使った受講生同士の自己紹介も盛り上がって、リラックスした雰囲気に。

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講義①:かたちで決まるタンパク質のはたらき

高校生物の教科書などで見るタンパク質は、とても複雑なかたちをしています。その正体は、多数のアミノ酸が連なった長い1本の紐

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この長い紐が、絡まったりしないで、正しいかたちを素早く作ることができるメカニズムについて、タンパク質の立体構造を組み立てることができる分子模型(←午後の実習で組み立てます)を使って説明しました。

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タンパク質を構成するアミノ酸は、それぞれ、化学的な性質が異なっています。講義では、20種類の中からランダムに選んだアミノ酸の分子模型を受講生に配布。このアミノ酸は何かな?どんな性質を持っているんだろう?

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タンパク質は私たちの体の中で、アミノ酸配列にしたがって多様なカタチを形成することで、生命活動を維持するための様々な機能を発揮します。高校生物の教科書にも載っているミオシン(筋収縮を起こすタンパク質)などについて、カタチと機能の関係を説明しました。

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講義の最後は、ティーティング・アシスタントの大学生たちにファシリテートしてもらいながら、「こんなことを理解したと思うんだ」と声に出してみて、考えたこと・気付いたことを受講者同士で共有する時間

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新型コロナウイルスが心配な状況のなか、感染防止のために受講生同士が交流する時間を短くせざるを得なかったのですが、限られた時間いっぱい、受講生たちは熱心に・活発に意見交換していました。

講義②:タンパク質のかたちと病気

配列のなかのアミノ酸が置き換わることで、タンパク質の性質が大きく変わってしまい、病気を発症してしまう場合があります。講義では、タンパク質の変異や構造異常が原因で引き起こされる様々な病気についてお話しました。

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ヘモグロビンの6番目のアミノ酸がたった1個置き換わることが原因となる鎌状赤血球貧血症について解説。専用ソフトウェアを使って、タンパク質構造データバンク(PDB)に登録されているヘモグロビンの立体構造も確認しました。

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新型コロナウイルスの出現により、私たちの生活は大きく変化しました。今回は、身近な大問題である新型コロナウイルスについても説明。特に、感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される変異株の特徴についてお話しました。

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講義では、新型コロナウイルスの表面にあって、ヒト細胞に侵入するときに重要な役割を果たすスパイクタンパク質の分子模型(3Dプリンターで制作)を受講生に配布。模型を見てもらいながら、このウイルスの感染機構を解説しました。

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この分子模型は、スパイクタンパク質の200万倍スケールモデル株式会社スタジオミダスさんが制作。スパイクタンパク質三量体のうち、2つの分子にそれぞれ、ヒト細胞由来のACE2受容体抗体分子が結合しています。

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変異株では、ウイルス表面のスパイクタンパク質ヒト細胞表面のACE2受容体との相互作用が大きく変化するのでは?と考えられます。今回、この相互作用を詳しく見るための分子模型も準備。

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この分子模型は、スパイクタンパク質の受容体結合部位(緑)とACE2受容体の一部(赤)。株式会社バイオモデリングリサーチさんが制作。分子模型が届いた次の日、学生たちと一緒に、プラモデル用の塗料でアルファ株・ベータ株・デルタ株の変異部位に印をつけました。

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変異株では、スパイクタンパク質のアミノ酸が置き換わることによって、ACE2受容体や抗体との相互作用が変化すると考えられます。振り返りの時間には、分子模型を眺めながら、このような相互作用の変化が感染力の強さワクチンの効果に対してどのような影響を与えるのか、受講生同士で話し合いました。

キャンパスツアー&昼食

午前中の講義が終了した後、10名程度のグループに分かれて、キャンパスツアー。

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今回は、本学・先進工学部・生命科学科の坂本先生にお願いして、分子の構造を解析するためのNMR分光装置、DNAの塩基配列を解析するための次世代シーケンサーを見学させていただきました。

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昼食は、新型コロナウイルス感染防止のため、各自で持参してもらったものを大きな部屋で黙食。できれば、本学の学食もぜひ体験してもらいたかったのですが…

実習①:コンピュータの中で薬を設計してみよう

新しい薬を開発しようとするときには、コンピュータの中で分子のふるまいを再現(シミュレーション)することで薬の候補となる分子を効率的に探し出す「インシリコ創薬」が活用されています。

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午後の実習では、はじめに、創薬支援のために開発されている分子設計ソフトであるmyPresto Portalを用って、コンピュータの中で新しい薬を設計して競い合うインシリコ創薬コンテストを開催しました。

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創薬のターゲットは、インフルエンザウイルスの感染機構に重要な役割を果たしているノイラミニダーゼというタンパク質。多くの受講生が、リレンザやタミフルなど、インフルエンザ治療薬にはお世話になっているようです。

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ここでも分子模型が大活躍。ノイラミニダーゼの分子模型を3Dプリンターで制作(バイオモデリングリサーチ製)し、タンパク質の立体構造を触って確かめながら、タンパク質と薬のかたちの相補関係を直感的に理解してもらえることができるように工夫しました。

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受講生たちは、結合部位付近のアミノ酸の化学的性質の違いなど、午前中に学んだことも踏まえながら、標的タンパク質(ノイラミニダーゼ)とより強く相互作用する分子を設計。「分子量は 400 g/mol 以下」などのルールもあって、受講生たちは試行錯誤しながら、一生懸命に取り組んでいました。

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myPresto Portalを使って、受講生が自ら設計した分子標的タンパク質であるノイラミニダーゼの相互作用の大きさを評価。コンテストなので、もちろん、最適な分子を設計した優勝者には大きな拍手!おめでとう!

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この講座で用いた分子設計ソフトは、開発をしているバイオ産業情報化コンソーシアムで無料配布されています。この講座が終わってからも、このソフトを使って、高校生物などで学ぶ様々なタンパク質を受講生自身で調べることもできます。

実習②:タンパク質のかたちを作ってみよう

午前中の講義に説明したように、タンパク質の正体は、多数のアミノ酸が連なった長〜い1本の紐。どうやったらこの長〜い紐が、絡まったりしないで、正しいかたちを素早く作ることができるのでしょうか?

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2つめの実習では、タンパク質のかたちの成り立ちを直感的に理解することを助けてくれる教材として、タンパク質の立体構造を組み立てることができる分子模型キットTangle Protein Building Set)を準備しました。

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受講生たちは、タンパク質の二次構造ごとに色分けされた一本のヒモを手に取り、ペプチド鎖からタンパク質の複雑な立体構造を組み立てることを体験。赤色のピースがα-ヘリックス、青色のピースがβ-シートを表しています。

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ヘリックスの部分にはかな〜り苦戦しながらも、ティーチング・アシスタントの学生たちが上手に手助けしてくれたことで、受講生全員、上手に分子模型を組み立てることができました!

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タンパク質は、1本のペプチド鎖のなかでアミノ酸同士が適切に相互作用することで、明確に定義された立体構造を形成します。分子模型を組み立てる体験を通して、タンパク質のかたちが成り立つ仕組みの巧妙さを実感していただけたのでは?

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受講者が組み立てた分子模型は、持ち帰ってもらうことができます。高校の授業でタンパク質のことを学ぶときには、この分子模型を先生や友達に自慢することができるかも。

修了式

修了式では、受講生ひとりひとりに修了証(未来博士号)を手渡しました。最後に、自分で組み立てた分子模型を手にして、みんなで記念撮影(写真は掲載していません)。おつかれさまでした!

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タンパク質のかたちが巧みに制御されて多彩な機能を発揮するとき、自然の妙美の極みである生命現象が生まれます。このプログラムが、私たち研究者が取り憑かれているタンパク質の魅力について、興味・関心をもっていただくきっかけになっていたら嬉しいです。

お世話になった方々

前日までの準備、そして、当日のアシスタントとして、受講生の学びを熱心にサポートしていただいた山本研究室の4年生・大学院生の皆さん(20名)

キャンパスツアーにご協力いただき、実験装置を分かりやすく説明していただいた、本学・先進工学部・生命科学科の坂本先生

新型コロナウイルス・スパイクタンパク質の素敵な分子模型を3Dプリンターで制作していただいた株式会社スタジオミダスの中村さん

スパイクタンパク質とノイラミニダーゼについて、私のムチャな注文を聞いていただきながら素晴らしい分子模型を3Dプリンターで制作していただいた株式会社バイオモデリングリサーチの中村さん

当日の様子を撮影していただき、受講生の皆さんが生き生きと輝いている姿を素晴らしい写真におさめていただいた株式会社光陽モネカの植村さん

ひらめき☆ときめきサイエンスの事務手続きで大変お世話になった本学・教学センター・研究支援担当の畑中さんと山本さん

そしてもちろん、今年度も採択いただき、必要な経費を支援していただいた日本学術振興会・ひらめき☆ときめきサイエンス事業

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